2024.06.05

睡眠と覚醒のメカニズム ~「松果体」と「メラトニン」の作用

睡眠と覚醒のメカニズム ~「松果体」と「メラトニン」の作用

あなたは、2021年に放映されたTV番組で、綾瀬はるかさん主演の「天国と地獄 ~サイコな2人~」をご覧になりましたか? 

ドン詰まりな女性刑事とサイコパスな殺人鬼の魂が入れ替わってしまうストーリー。

綾瀬さん扮する望月彩子(もちづき・あやこ)と、高橋一生さん演じる日高陽斗(ひだか・はると)という両者の名前をみたときに、「ハハーン、なるほど、いろいろな意味が込められているな」と私は感じたのです。

あなたはどう思うでしょうか?

 

 

1. 太陽と 月は相互に 対比あり

月と太陽

 

そもそも、天地万物において、あらゆるものが入れ替わります。

天国と地獄、善と悪、太陽と月なども含まれますね。

漢字の「日」と「月」が合わされば「明」るくなりますが、世の中はなかなか思うようには進みません。

いろいろな対比が存在し、太陽のような明るい笑顔 vs月のように静かに見守る存在という場合もあれば、本番組では満月(望月、もちづき)vs新月(朔、さく、旧暦の1日目)、刑事vs犯人、女vs男、兄vs弟などが複雑に交錯することに。

新月の夜に事件が起こり、「φ(ファイ、空集合)」のマークが出現。

朔もφも「0または1からのスタート」を意味します。

そういえば、昔から、満月の夜には、半人半狼の狼男が変身するという伝説が有名です。

元来、動物は地球の磁気や引力、気圧などを鋭く感知できます。

しかし、動物から進化した人間は、現在そのセンサーは鈍くなりました。

 

月の引力は、以下の図のように、生物にも潮の満ち引きにも大きく影響します。

 

2. 松果体とメラトニンの働き~睡眠の リズムを作る メラトニン

さて、今回は「眠りと覚醒のメカニズム」についてお話を進めましょう。

以前から「月が満ちることで眠りに誘われる」というようなフレーズを聞いたことはありませんか。

実は、月の光ではなく、「太陽の光を浴びた14~15時間後に眠くなるホルモンが分泌されて眠くなる」というのが医学的な定説なのです。

人間の脳には松果体があり、ここから「メラトニン」というホルモンが分泌されています。

これが大きな役割を果たすことに。

血中濃度を調べますと、夜の20-22時ごろから濃度が急上昇して、私たちの身体に内在している体内時計をうまく調節しています。

つまり、身体を昼間は活動体制に、夜間は休息体制に保つ役割を担うのです。

また、加齢とともに、分泌がぐっと落ちてきています。

そのため、子供の頃は熟睡できても、中高年になるとぐっすり眠られないという一因となるのがわかりますね。

 

 

3. 松果体こぼれ話~動物で 第三の眼が 活躍

ここで、関連する話題を一つ紹介しましょう。

比較生物学から、実は他の動物にも松果体があります。

睡眠ホルモンであるメラトニンを分泌する大切な脳の器官なのです。

場所は、魚では下図のような箇所に存在し、ニワトリやサカナなど多くの動物では、光を感じるいわゆる「第三の眼」として機能してきています

 

実は、第三の眼に関わる概念は広いのです。

統合医療やヨーガの領域では、額の真ん中にある「チャクラ」が相当します。

漫画・アニメでは、手塚治虫のSF漫画「三つ目がとおる」や、ウルトラセブンのビームランプもこれをモデルとしていますね。

いろいろな学術面においては「内なる目、松果眼」とも称され、神秘主義や形而上学で扱われることも。

 

4. 体内時計は25時間周期?メラトニンが果たす役割

著者がかつて担当した患者では、睡眠・覚醒リズムが25時間の周期でした。

つまり、1日に1時間ずつ生活リズムがずれてしまうのです。

人を時計がない真っ暗な洞窟で何週間も生活させると、日々のリズムは24時間ではなく25時間となります(free run)。

地球の自転が24時間なので、身体が無意識で24時間に合わせており、メラトニンが調節してきます。

かつて、メラトニンの薬剤が日本になく、米国から取り寄せたこともありました。

現在は、メラトニン受容体作動薬が本邦にあり、不眠症における入眠困難の改善に処方可能です。

夜型や睡眠時間のずれが治らない場合に、体内時計を調整する効果が期待されます。

薬の名前は「ロゼレム」です。

昼夜逆転した症例や、オリンピック選手の「時差ボケ」防止などにも効果がみられ、強い光刺激と組み合わせる方法も紹介されています。

自己判断せず、日本睡眠学会 「睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン」を参照し、専門家に相談してください。

なお、薬剤の名称について、ロゼレムは「バラ色の眠り」から「rose+レム睡眠」に、一般用医薬品のドリエルは「dream well」に由来しています。 

 

 

 

今回のおすすめ音楽

コラムの中で扱った「松果体」を活性化させメラトニン生成を促す癒しの音楽をご紹介します。

睡眠やリラックス時に最適!どうぞお試しください。

『松果体を活性化させメラトニン生成を促す癒しの音楽』

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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【トップ・スペシャリスト プロフィール】

板東浩
医学博士 日本統合医療学会四国支部長

徳島県糖質制限研究会代表 ​ 徳島大学卒業、ECFMG資格取得後、米国でfamily medicineを臨床研修。専門領域はアンチエイジング、糖質制限、音楽療法、スポーツ医学など。アイススケート選手として国体出場(1999 ~ 2003)。第9回日本音楽療法学会大会長(2009)。第3回ヨーロッパ国際ピアノコンクール(EIPIC)in Japan銀賞(2012)。日本プライマリ・ケア連合学会大会長(2017、高松)。 糖尿病関係の英文医学雑誌4誌のEditor-in-Chief(編集長,2024)。著書30冊以上、印刷物2,000以上、英語論文400以上。「新老人の会」徳島代表。

​公式サイト:https://pianomed.org/

 

 

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