2024.12.04

1/fゆらぎを含む癒やしの音楽|1/fゆらぎとは何か|モーツァルトのクラシック曲が眠りを誘う

1/fゆらぎを含む癒やしの音楽|1/fゆらぎとは何か|モーツァルトのクラシック曲が眠りを誘う

自然界のさまざまな音や、ある種の音楽などに含まれる「1/fゆらぎ」

近年、そのリラクゼーション効果に注目が集まっています。

当コラムでは、1/fゆらぎの癒しのメカニズムと、1/fゆらぎが含まれる音楽についてご紹介します。

 

1. 森羅万象に含まれる「ゆらぎ」

~宇宙から脈拍まで~

さて、今回のテーマは「ゆらぎ(揺らぎ)」です。

大宇宙では、惑星の動きや光、電磁波の動きはおおむね計算できます。

しかし、太陽の黒点の出現のように、予測が難しい動きも含まれます。

一方、小宇宙とされる人間の身体でも、ほぼ一定のリズムで心拍がみられます。

しかし、多少早くなったり遅くなったりして、リズムが揺らいでいるのです。

つまり、「ゆらぎ」とは、規則的なリズムが続いている現象に、多少不規則なリズムが合わさったものと言えましょう。

ゆらぎの現象は、森羅万象に存在します。

以下の表に示したように、驚くほど多岐にわたるものなのです。

 

 

 

 

2. 脈拍のゆらぎでわかるリラックスレベル

~副交感神経とゆらぎ

 

あなたの呼吸はどのような状況でしょうか。

そのリズムや深さ、大きさは一定ではなく、ゆらいでいますね。

実は、この脈拍のゆらぎを測定することで、その人がどの程度リラックスしているかを診断することが可能なのです。

 

 

◆脈拍のゆらぎとリラックスレベル

ヒトが呼吸しているとき、心臓に還ってくる血液量は時々刻々と変化します。

そこでヒトの身体は、心拍出量を変化させるため瞬時に対応して、脈拍を微妙に変えているのです。

 

●リラックスしているとき…脈拍のゆらぎは大きくなる

もしあなたが夕食を終えて自宅でリラックスしている場合、副交感神経が優位なので揺らぎの程度が大きくなります。これは正常反応です。

 

●緊張しているとき…脈拍のゆらぎは小さくなる

昼間、職場で忙しく緊張している時間帯には、交感神経が優位に働くため、揺らぎはより小さくなります。

さらに、糖尿病性神経障害がある患者さんの場合、自律神経の働きが障害されるため、揺らぎが極端に低いデータを示すのです。

 

 

3. 「1/f ゆらぎ」とは何か

~秩序と混沌のあいだの癒やし~

 

この「ゆらぎ」について、最近「1/f ゆらぎ(エフぶんの1ゆらぎ)」が注目されています。

ここで「f」とはfrequency(振動), fluctuation(揺れ)の略です。

音楽や音響学の研究が進み、概要を短い紙面でお伝えするのは難しいですが、一端をお話しましょう。

 

 

◆1/f ゆらぎを解析する

音楽について分析する方法が、以下の「1/fパワースペクトル特性関数図」です。

 

図の横軸は、音の質(振動数、高さ)で、左から右に低音、中音、高音に相当します。

縦軸は解析した音の量を示します。

それでは、わかりやすい3つの場合を示してみましょう。

 

①カオスの世界

②全く規則的な世界

③適度なゆらぎの世界

 

 

①カオスの世界

いろいろな分野で、全く不規則でカオスの世界が存在します。

例えば、数学では乱数表。

映像では、かつて真夜中にテレビ番組終了後の画面が相当するでしょう。

画像は砂あらし、音はサウンドではなく全く不規則なノイズです。

もし、音楽で例えられるなら、ロック音楽の中で旋律も和音もリズムもすべてバラバラで、全く予想できない展開となるかもしれません。

解析すると1/f⁰(計算すると常に=1.0)と表されます。

 

②全く規則的な世界

全く規則的なリズムが続く場合が該当します。

二次元空間では方眼紙、音では時報のリズムやメトロノームが発するリズムなどです。

これらには全くゆらぎがなく、1/f²と表現されてきました。

こんなリズムや音を聴いていると、あまりに単調すぎて、眠たくなるかもしれません。

 

③適度なゆらぎの世界

3番目は,適度なゆらぎが含まれる場合です。

自然界の現象や多くの生物が有する現象

モーツァルトなどを代表とするクラシック音楽が相当します。

楽曲にはほぼ規則的な部分と、適度な不規則性や展開が含まれるため、適切な頃合いで快く感じられることに。

コンピュータで解析すると1/f¹となります。

いろいろな音楽の場合には、おおむね、「1/f^1.0」~「1/f^1.4」ぐらいの範囲に収まります。

 

 

 

4. 1/f ゆらぎを含む音楽 

~モーツァルトなどのクラシック音楽が有

 

音楽療法では各人により、好みや馴染みの曲が異なるもの。

ですので、特定の曲が万人に効くというわけではありません。

しかし、多くの人々が選択する際に、おおむね妥当なポイントがあります。

まず避けるのがよい条件として、変化が大きく激しすぎる音楽、交響曲、歌詞があったり感情移入をしてしまう曲など。

一方、推薦できる条件には、自然と心に寄り添ってくれる曲としておおむねクラシック曲がよいでしょう。

 

 

【1/fゆらぎを含む代表的なクラシック音楽】

 

 ◆モーツァルト:アイネクライネナハトムジーク

 

◆サン=サーンス:白鳥(『動物の謝肉祭』より)

 




板東 浩

医学博士
日本統合医療学会四国支部長
徳島県糖質制限研究会代表

徳島大学卒業、ECFMG資格取得後、米国でfamily medicineを臨床研修。専門領域はアンチエイジング、糖質制限、音楽療法、スポーツ医学など。アイススケート選手として国体出場(1999 ~ 2003)。第9回日本音楽療法学会大会長(2009)。第3回ヨーロッパ国際ピアノコンクール(EIPIC)in Japan銀賞(2012)。日本プライマリ・ケア連合学会大会長(2017、高松)。
糖尿病関係の英文医学雑誌4誌のEditor-in-Chief(編集長,2022)。著書30冊以上、印刷物2,000以上、英語論文300以上。「新老人の会」徳島代表。

公式サイト:https://pianomed.org/


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