あなたがJAZZで聴きたい楽曲は?
ジャズの世界では「スタンダード・ナンバー」という言葉があります。これは、多くのアーティストによって演奏され、一般的に広く知られている楽曲を指します。日本語では「定番」と訳されることも多く、アメリカで生まれたジャズの伝統の中で、スタンダード・ナンバーは重要な位置を占めています。
ジャズは、即興演奏がその本質と言われることがありますが、スタンダード・ナンバーはその即興のベース(題材)として多くのジャズメンに愛され、演奏され続けてきました。
これらの曲は、ジャズの歴史においても、現代でも、演奏するアーティストによる解釈を通じて、常に新しい形で生まれ変わっています。
どのような楽曲がスタンダード・ナンバー?
では、どのような楽曲がスタンダード・ナンバーとして広く知られているのでしょうか?
海外のジャズメンたちがモチーフとしてきたもののひとつに映画音楽が挙げられます。
マイルス・デイヴィスやビル・エヴァンス、オスカー・ピーターソンらが取り上げた「Someday My Prince Will Come(いつか王子様が)」(白雪姫のテーマ)や、ジョン・コルトレーンが取り上げた「My Favorite Things(私のお気に入り)」(サウンド・オブ・ミュージックの楽曲)など、これらの楽曲は映画の世界で生まれながら、ジャズによって新たな命を吹き込まれています。
情感豊かで耳に残りやすい映画音楽が即興演奏の場であるジャズにおいてまた新たな美しい旋律となり、多くの人々に愛されてきました。
このような背景にはアメリカでの映画という娯楽の発展との関係が無縁ではありません。
アメリカでのアカデミー賞(アメリカ映画の健全な発展を目的に、出演者や制作陣を表彰し讃えるための映画芸術科学アカデミーによる映画賞)は第1回が1929年(昭和4年)に開催されており、時にマイルス・デイヴィスは3歳、『白雪姫』の映画で「いつか王子様が」が録音された1937年でもマイルス・デイヴィスは11歳でした。
普段からの馴染みがないと少し難しく感じるかもしれないジャズですが、有名なジャズメンたちも若いころに好きな映画の曲があって、その好きという想いに従って自分たちの表現でカヴァーしたものがスタンダード・ナンバーとして聴き継がれている、という流れを知るとジャズの世界もより身近に感じられるかもしれません。
日本での定番曲、スタンダード曲
一方で、日本でも黒澤明監督による1954年の『七人の侍』や、同年の『ゴジラ』など戦後に改めて娯楽映画は大きく発展しました。
その中の映画音楽ということで言えば特に後者『ゴジラ』での伊福部昭によるテーマ曲はゴジラシリーズの根強い人気を支える大きな要素の一つとも言えるでしょう。しかし、そのテーマ曲もアメリカでのスタンダード・ナンバーのようにはジャズやその他ジャンルでカヴァーされてきたわけではありません。
また昭和後期や平成の時代には、テレビドラマの主題歌が国民的に大きな影響力を持っていました。
1980年代から現在まで、日本の音楽文化において、テレビドラマの主題歌やその合間に繰り返し流されるCM曲は、人々に広く親しまれる存在となり、それらの楽曲はやがてカヴァーされ、定番曲となっていきました。
例えば、尾崎豊の「I LOVE YOU」はその象徴的な一例です。もともとは1983年に発表されたデビューアルバムに収録された1曲でしたが、1987年にフジテレビ系で放送された『北の国から'87 初恋』の挿入歌として使われ、改めて広く当時の若者たちの心を捉えました。この楽曲はその旋律の美しさや感情表現の豊かさから、ジャズも含めた様々なアレンジにもしっくりと馴染みます。
このような楽曲は、様々なアーティストたちによってカヴァーされ、またはカヴァーされていくことで、新たな定番、新たなスタンダードとなる可能性も秘めています。
アメリカと日本の定番曲の違い
こうしてみると、日本における定番曲、スタンダード曲は、ある面でアメリカとは異なる形で進化していることがわかります。
ジャズはその創成期においてはダンスミュージックとして広く愛されていましたが、同時にブルースやゴスペルなどアフリカ系アメリカ人の音楽文化の影響を強く受けていました。
やがて様々なスタープレイヤーの演奏や解釈を経て細分化もしていく中で人気楽曲はリスナーの「共通体験」となりスタンダード・ナンバーとなっていきました。
しかし、日本ではその音楽的な土壌が異なるため、より直接的にテレビドラマの主題歌などがそのまま多くの人に愛される「共通体験」となり、オリジナル音源が広く好まれる状態から様々なカヴァーが作られていくことで定番曲、スタンダード・ナンバーに昇華されていくケースが多いと言えます。
ここで興味深いのは、日本におけるヒット曲の「共通体験」としてのテレビドラマや映画の役割です。
1980年代後半から現在まで、テレビドラマは多くの日本人にとって、日常の一部であり、そこで使われる楽曲は、視聴者の心に深く刻まれてきました。
その中でタイアップという言葉も一般的に広く知られる言葉となり、楽曲のヒットにもタイアップは欠かせないものとなっていきました。
『JAZZで聴きたい J-POPラブソング』
この度発売になった『JAZZで聴きたい J-POPラブソング』は、そんなタイアップとなった曲を中心に様々な楽曲をセレクト致しました。
多くのリスナーの方に「JAZZで聴きたい!」と思ってもらえるお馴染みの楽曲を選んだところ、先の1987年フジテレビ系『金曜劇場 北の国から'87 初恋』挿入歌の「尾崎 豊 / I LOVE YOU」から、2024年NHK 連続テレビ小説『虎に翼』主題歌の「米津玄師 / さよーならまたいつか!」まで全19曲中16曲がドラマ関連の楽曲になりました。
曲順 |
オリジナル・アーティスト |
曲目 |
タイアップ |
1 |
米津玄師 |
さよーならまたいつか! |
2024年NHK 連続テレビ小説『虎に翼』主題歌 |
2 |
藤井 風 |
花 |
2023年フジテレビ系木曜劇場『いちばんすきな花』主題歌 |
3 |
あいみょん |
会いに行くのに |
2024年カンテレ・フジテレビ系 月10ドラマ『アンメット ある脳外科医の日記』主題歌 |
4 |
Omoinotake |
幾億光年 |
2024年TBS系「火曜ドラマ」枠『Eye Love You』主題歌 |
5 |
竹内まりや |
純愛ラプソディ |
1994年日本テレビ系水曜ドラマ『出逢った頃の君でいて』主題歌 |
6 |
Official髭男dism |
Subtitle |
2022年フジテレビ系 木曜劇場『silent』主題歌 |
7 |
Mrs. GREEN APPLE |
僕のこと |
2022年 カロリーメイト受験生応援シリーズ第9弾CM『狭い広い世界で』篇CMソング |
8 |
山下達郎 |
ずっと一緒さ |
2008年フジテレビ 系 月9ドラマ 『薔薇のない花屋』 |
9 |
宇多田ヒカル |
First Love |
1999年 TBS 系テレビドラマ『魔女の条件』主題歌 |
10 |
小田和正 |
ラブ・ストーリーは突然に |
1991年フジテレビ系月9ドラマ『東京ラブストーリー』主題歌 |
11 |
TULIP / 財津和夫 |
サボテンの花 |
1993年フジテレビ系月9ドラマ『ひとつ屋根の下』 |
12 |
DREAMS COME TRUE |
LOVE LOVE LOVE |
1995年TBS系金曜ドラマ『愛していると言ってくれ』主題歌 |
13 |
HY |
366日 |
2024年フジテレビ系月9ドラマ『366日』主題歌 |
14 |
Mr.Children |
Sign |
2004年TBS系ドラマ「日曜劇場」『オレンジデイズ』主題歌 |
15 |
尾崎 豊 |
I LOVE YOU |
1987年フジテレビ系「金曜劇場」北の国から'87 初恋 挿入歌 |
16 |
米米CLUB |
君がいるだけで |
1992年フジテレビ系月9ドラマ『素顔のままで』テーマソング |
17 |
いきものがかり |
1 2 3 〜恋がはじまる〜 |
2013年カルピス『カルピスウォーター』CMソング |
18 |
絢香 |
三日月 |
2006年au 『LISMO』CMソング |
19 |
平井 堅 |
瞳をとじて |
2004年東宝映画『世界の中心で、愛をさけぶ』主題歌 |
またJAZZのアレンジは日本のリスナー向けにそれぞれの楽曲がもつ広く知られたメロディーを大切に、おしゃれなカフェなどで人気の心地よく聴いて頂けるアレンジがされています。
現代の忙しい日常の中で、私たちは時に音楽を通じて心の安らぎを求めます。
特に、誰もが知っているような楽曲をジャズのアレンジで聴くことは、懐かしさと新鮮さが共存する贅沢なひとときと言えるかもしれません。
長く親しまれてきたメロディーや定番曲、スタンダードと呼ばれる楽曲は歌唱のないインスト楽曲としてもリスナーの心に大きく作用し、心身をリラックスさせてくれることでしょう。
ピアノの柔らかな音色で名曲に新しい命が吹き込まれた作品を是非お楽しみください。
『JAZZで聴きたい J-POPラブソング』
商品ページは コチラ
◆アーティスト
Moonlight Jazz Blue & JAZZ PARADISE
◆商品番号:QOCD-1792
◆価格:¥1,980 (tax in.)
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一世を風靡した新旧のJ-POPラブソングの中から、秋から初冬の季節にピッタリな楽曲をカフェ・ジャズ・アレンジのピアノを中心にお届けし、生活の中のホッとする時間を彩ります。
レジェンド・アーティストの世代を超えるヒットに加え、旬の話題のアーティストも収録!
※本作はピアノによるインストゥルメンタル作品でヴォーカルは入っておりません。