あなたは、気持ちよく寝られたらいいな、と思いませんか?
こちらでは、快眠のコツについてお話しています。
その背景として、睡眠と覚醒はどのような仕組みになっているのでしょうか。
1. メラトニンのメカニズム
~メラトニン 睡眠リズムを 調節し
私たちの頭の中には、小さな「松果体」があり、
ここから「メラトニン」というホルモンが分泌されています。
その血中濃度を調べますと、夜の20-22時ごろから急上昇して、身体にある体内時計を調節してくれているのです。
つまり身体を昼間は活動体制に、夜間は休息体制に保つ役割を担うのです。
「メラトニン」…人間の体内リズムを24時間周期に調整してくれる
人間は地球上で24時間の周期で生活していますね。
もし、人を時計がない真っ暗な洞窟で何週間も生活させると、そのリズムは24時間ではなく25時間となるのです。この現象を、フリーラン(free run)と呼びます。
実は、メラトニンが調節して、24時間に合わせてくれているというワケ。
症例カルテ
睡眠・覚醒の周期が24時間から25時間にずれてしまう
著者が以前に担当した患者は、睡眠・覚醒リズムが25時間の周期でした。
下の2つの図をご覧ください。
図1 は24時間の睡眠リズムですが、図2 は25時間の睡眠リズムのため、毎日1時間ずつ、睡眠覚醒リズムがずれていることがわかります。
これは、専門用語で難しいのですが、「非24時間睡眠覚醒症候群」という状態なのです。
2. オレキシンのメカニズム
~オレキシン シャキッと脳を 覚醒し
大脳下部には、視床下部という大切な領域があります。
食欲や、体温、睡眠、自律神経の中枢となります。
ここから「オレキシン」というホルモンが分泌されており、睡眠と覚醒の働きに深く関わっています。
映画でたとえると、組織からの指令が録音されたテープレコーダーで007に届けられる状況と同じです。
その指令はすぐに消えてしまいますが、受け取った007はシャキッとして覚醒し多角的に頭を働かせて仕事をこなすというワケ。
もし、指令がこなければ、刺激がなく眠ってしまうかもしれません。
そのオレキシンを刺激させる3大要素があります。
①栄養状態で空腹という刺激
②体内時計で朝になったという刺激
③心理状態で気持ちが高ぶったという刺激
これらの刺激を受けるとオレキシン分泌が増えて、覚醒の状態を保持するのです。
下図のように、ヤジロベエのようにうまくバランスを保っています。
逆にオレキシン分泌が減ると、覚醒→睡眠の方向に進むことに。
これに関連して、誰もが日常で経験していることがあるのです。
美味しいご馳走を食べ過ぎると、その後眠気が襲ってきますね。これはオレキシンの仕業ともいえましょう。
食事に含まれる糖質によって血糖値が上昇すると、脳脊髄液の中のグルコース濃度も上昇することに。
すると、オレキシンを作動させるニューロンの活動が一時的に弱まるため、眠たくなってしまうというワケです。
3. もうひとつの睡眠・覚醒システム
~実際は 3つのシステム 調整系
ここまで、睡眠と覚醒について、
①体内時計系のメラトニン
②覚醒調節計のオレキシン系
についてお話してきました。
もう一つ、
③恒常性調節系
というホルモンも関わっています。
少々難しいことで恐縮ですが、睡眠中枢をコントロールしている「GABA作動性ニューロン」が働いているのです。
3者の関係性を示した図をご覧ください。
このように、睡眠と覚醒が切りかわるときには、これらのホルモンがバランスを保ちながら誘導してくれています。
良い夢をみるように、快眠に誘ってくれているといえましょう。
子守歌のような曲として、ブラームスが作曲した「眠りの精」が知られてきました。
昔から、眠りの妖精が砂を子供の眼にかけると、快眠に誘われるとされています。
心を癒やす音楽に心身を抱かれて、良い夢がみられるといいですね。
4. 良い眠りを得るために
~両ホルモン 協力しあって 良いリズム
みなさまの日々の生活で、昼間に活動し、夜間にぐっすり寝ることができるのも、これらのメカニズムが働いてくれているからです。
ただ、現代社会では、あまりにも多くのストレスが降りかかってくるため、多くの人々が睡眠障害で悩んでいます。
本来は、規則正しい生活習慣として適切な食事・運動・睡眠を日々続けるのが理想ですが、現実にはそう簡単ではありません。
必要な場合には、関連する薬剤も使われているので、活用できます。
しかし、心身ともに健やかに働くという点で、音楽という薬「音薬」をうまく活用するのがベストといえましょう。
今回のおすすめ音楽
今回は、板東先生推奨の「医学博士推奨~美しく眠るピアノ」をご紹介します。
演奏:Classy Moon
新陳代謝を促進し、美しく眠る為のヒーリングアルバムです。
コンサート・ホールにて行われた生ピアノのレコーディングによる自然の残像音が、至福の癒やしの空間を生み出します。
”音薬”を活用し、すこやかな毎日をお過ごしください。
板東 浩
医学博士
日本抗加齢医学会評議員
日本統合医療学会四国支部長
徳島大学非常勤講師
徳島大学卒業、ECFMG資格取得後、米国でfamily medicineを臨床研修。専門領域はアンチエイジング、糖質制限、音楽療法、スポーツ医学など。アイススケート選手として国体出場(1999 ~ 2003)。第9回日本音楽療法学会大会長(2009)。第3回ヨーロッパ国際ピアノコンクール(EIPIC)in Japan銀賞(2012)。日本プライマリ・ケア連合学会大会長(2017)。
国際的英文医学雑誌4誌のEditor-in-Chief(編集長,2024)。著書30冊以上、印刷物2,000以上、英語論文500以上。「新老人の会」徳島代表。
公式サイト:https://pianomed.org/